薬剤師が転職できる職種のひとつに、公務員があります。麻薬取締官・国家公務員・県庁・市役所・保健所など、活躍の場は様々です。
ここでは、働きながら転職先に公務員、とくに県庁・都庁の薬事行政職を目指している方向けに「小論文」「面接」対策のノウハウをお伝えします。
はじめに
筆者自身も調剤薬局で働きながら都庁・関東圏の県庁を受験し、どちらも一次試験を突破しました。
二次面接は残念な結果となりましたが、予備校で面接対策で得たノウハウや失敗談・予備校でどのような対策をしたかを中心にお話ししてみることにしましょう。
ご存じのように、公務員の受験には年齢制限があり、多くは受験年度4月1日時点での満年齢、28才が期限です(地方の県庁では30才前半までのことも)。また、働きながら幅広い試験科目を勉強し、現役の学生と同じ試験区分で戦うことになります。
最初で最後の挑戦、となる方もいらっしゃると思います。あなたが後悔なく試験に挑み、公務員職を勝ち取るための指針を作るために、ぜひご活用ください。
目次
公務員の薬事職・小論文対策ノウハウ
まず初めに、わたしが行った小論文対策をお話ししていきます。
都庁の小論文試験は独特
都庁の一次試験に小論文が出題されますが、方式が独特です。テーマの他2~3つの資料も提示される「資料分析型」の問題なので、過不足なく課題と資料を絡めて書けるよう、慣れておく必要があります。
解答方法も独特です。字数は全体で1,000字~1,500字。まず(1)で図表から考えられる都の課題を200字程度でまとめます。次に(2)で、先ほど述べた課題に対し「あなたが考える」具体的な取り組みを述べていきますが、どちらも簡潔なまとめ方を身に付けておかねばなりません。
では具体的な対策を詳しく見ていきましょう。
練習を重ねよう
小論文対策は、これに尽きます。時間内に自分の考えをまとめ、文字数の過不足なく書けるよう、一週間に一度でいいので練習しましょう。時間配分や取り入れた知識、自分の考えを整理しておくためにも大切なプロセスです。
また、自己流の書き方は危険です。書き方のコツは次に書きますが、もし文章を書くことに苦手意識が強い場合は、公務員対策の学科がある予備校で添削、授業を受けるのもオススメします。
わたしも小論文に対する不安がありました。なので直前に、予備校で都庁の小論文対策に特化した講座を受けていました。添削も無制限に受けられたので、週に2回は練習して添削してもらいましたよ。
書き方のコツ
次に、都庁の小論文の書き方のコツを7つご紹介します。
- 構成に時間使う
- あくまで「図表ベース」で書く
- 課題がうまくまとまらない時は、とにかく手を動かしてネタを問題冊子の空欄に書いてみる
- 見直しの時間つくる
- 知識をぶつける試験ではない、「手紙」のように丁寧に書こう
- 公務員の目線で書こう
- 「伝わる」文章を書こう
では、それぞれ具体的に見ていきましょう。
1:構成に時間使う
試験時間が始まったら、まずは構成に時間を使います。試験時間一時間半のうち、最低でも15分は構成にあてましょう。初めに構成を作っておくことで、書いていくうちに迷子になり、支離滅裂な文章になってしまった、という悲劇を防げます。
都庁は(1)で図表から考えられる課題を、(2)で具体的な取り組みを、というように、迷子になりにくいように設定はされています。しかし(2)は取り組みの提示だけに終わらず、初めに「(1)で示した課題の現状」→「課題の原因」→「課題を放置した場合何が起こるか、問題提起」を200字程度でまとめましょう。この過程を経て「具体的な取り組み」を書くと、説得力が増します。
また、取り組みは多く挙げすぎず3つ程にとどめ、それぞれに厚みを持たせましょう。書きすぎはただの知識の羅列になり、採点者に飽きられます。
そして最後は「結論」で、自分が公務員になったらこんなふうに尽力したい!とアピールして締めましょう。
2:あくまで「図表ベース」で書く
(1)の、図表から考えられる都の課題を200字でまとめる問いでは、前置き・背景を長く書かず、あくまで「簡潔」に「図表」からまとめることを忘れずに。
テーマと自分の知識・持ちネタに引きずられ、提示された図表を無視しないように注意しましょう。テーマから外れない、はもちろんのこと、資料と関連付け課題をまとめることを意識付けてください。
3:課題がまとまらない時は、手を動かしてネタを問題冊子の空欄に書く
必ず語尾に「〜が重要な課題である」とはっきり述べることを意識してまとめてみましょう。
テーマがよくわからない場合は、自分なりに分かりやすく言い換えて問題の脇に書き、それを軸に資料を見ていきます。グラフでは分かりやすい数字の違いや、最大・最小部分を確認し、問題冊子に気になる部分を書いていきます。
うまくまとめられない時ほど、頭で考えるだけでなく手を動かし、問題冊子の空欄を使い倒し、ネタを書き連ねるのがオススメです。書けば書くほど、解答に使えるネタが増えていき、頭が整理されますよ。
4:見直しの時間つくる
必ず10分は見直しの時間を作ってください。誤字・脱字は減点対象になります。練習の段階で自分が間違えやすい漢字を把握しておくことも重要です。
しかし、通しで読んで違和感のある文章になった際は構成の段階が甘い可能性が高いです。訂正も困難なので、繰り返しますが、構成は念入りに練ってくださいね。
5:知識をぶつける試験ではない。「手紙」のように丁寧に
小論文試験は、あなたの知識をぶつける試験ではありません。解答用紙の向こうの試験官に、自分の主張を分かりやすく示すための試験であり、相手の聞きたいことに答える必要があります。
事実の羅列は控え、あくまで自分の意見として内容に厚みを持たせましょう。採点者への「手紙」だという意識を持って、熱く丁寧に書いてください。
6:公務員の目線で書こう
自分が公務員だったら、の視点を意識して書いてください。公務員になったら課題にこう取り組んで、都民の生活をよくしていきたい!という熱意を示します。
また、夢のある部分だけではなく、実際働いた際の具体的な視点も忘れずに。コスト面などの実際政策を行う際の問題点、その解決策も合わせて書いていきましょう。
7:「伝わる」文章を書こう
丁寧な字で書くことを心がけましょう。ぱっと見で読みにくい字は、採点者でなくても読む気になりませんよね。
わたしは癖字が酷いので、市販で売られているボールペン字練習ノートで矯正しました。癖字の方はコピーしたようなきれいな字、にはならなくても「読みやすい字」になることを目指しましょう。
また、文章を書く際は1文1義、1文を短く、を意識してください。読み手にも分かりやすいですし、書き手にとっても、結局何が言いたいんだっけ?という迷子を防ぐ効果があります。
難解な文章を書く必要はありません。「伝わる」文章を書くことが大切です。
公務員の薬事職の小論文対策
書くだけでなく、情報収集も大事
書く練習の他にも、オススメの対策があります。それが新聞・自治体の公式HPからの情報収集です。
あらかじめ頻出テーマの時事ネタ・自治体の取り組みを仕入れたうえで、自分なりの解決策、改善点などの考えを用意しておきましょう。
頻出テーマは大枠では「社会問題」「環境問題」「地方創生」、詳細の例は以下の通りです。
テーマ「社会問題」
- 少子化・人口減少
- 超高齢社会
- ワークライフバランス・働き方改革
- 女性の活躍
- 格差社会・貧困問題
- 情報管理
- コンプライアンス・危機管理
テーマ「環境問題」
- 防災
- 温暖化対策
- 循環型社会
- 海洋プラスチックごみへの対策
テーマ「地方創生」
- 訪日外国人誘致・観光振興
- 地方の活性化・地方創生
- オリンピックに関する取り組み
以上のテーマについて「問題の背景・現状」と「解決策・方策」、「将来考えられる影響」を持ちネタとして仕入れます。ノートに手書きでも、電子媒体のメモ機能にでもいいので、必ず自分なりの文章でまとめておきましょう。
- 新聞で時事ネタをチェック
- 都のHPから長期ビジョンを確認、自分の意見、メリット・デメリットを用意
- 小論文対策用の本、新聞の社説を読み込む。上手な論文をたくさん読み込んで参考にする
この3点でのインプットがオススメです。
公務員の薬事職・面接対策ノウハウ
次に、面接対策についてご説明していきます。
面接対策は自己流では難しいので、予備校での対策をオススメします。
現役生はもちろんキャリアセンターで練習を積んできます。就活で慣れてるし、と思う方もいらっしゃると思いますが、はっきり言ってしまうと調剤薬局系の面接経験では足りません。
予備校の面接対策は、公務員二次試験のプロがみてくれる
予備校では小論文・面接対策をしてくれるコースがあります。
面接対策は二次面接のプロが練習・フィードバック込みで対策してくれ、スマホの動画で撮影して自分の癖を客観的に直すこともできます。経歴や面接シートから、本番で突っ込まれそうな部分を的確に突いてくれるので鍛えられますよ。
面接シートも添削してもらえるので、本番は安心して臨むことができました。
面接対策の心得
次に、面接対策で学んだノウハウを5つお伝えします。
- 面接シートは字の大きさに注意 分かりやすく、見やすく書こう
- 面接はコミュニケーションの場、演説しない
- 公務員になったら何をしたいか、具体的なビジョンを持って臨もう
- 練習を重ねよう
では、詳しくご説明していきます。
1:面接シートは字の大きさに注意!分かりやすく、見やすく書こう
面接シートは目を細めなくてもいいくらい、大きめの字で書きましょう。面接官の中には、小さい字が見づらい方もいます。詳細は当日、面接の中であなたの口で伝えればいいので、シートに詰め込まないようにしましょう。
また、面接官が気になった部分は、本番で突っ込んで聞いてくれます。わざと「余白」を用意し、ここぞ!というところに試験官の質問を誘導することもコツのひとつです。面接シートは、面接のためのあなたの見取り図です。分かりやすく見やすくを心がけてください。
2:面接はコミュニケーションの場、演説しない
面接は、あくまであなたと面接官とのコミュニケーションの場です。あなたの経歴や、熱意を長々と演説する場ではありません。言葉のキャッチボールを心がけましょう。
形式的な志望動機以降は一方的なボール投げにならないように、演説調ではなく、頷きなどを交えながら、短めに応答しましょう。
3:公務員になったら何をしたいか、具体的なビジョンを持って臨もう
HPからだけの薄っぺらい理由はバレます。何がしたいのか、ネット情報だけでなく都庁の資料室などを訪問して具体的なビジョンを持ちましょう。
実際働いている方に具体的な話を聞くのが理想なので、都が主催するの就職イベントにぜひ参加してください。行政職の若手職員に直接話を聞ける、またとない機会になるはずです。
4:練習を重ねよう
働きながら苦労して勝ち取った二次試験です。思いの丈を、面接官とのコミュニケーションを通じ伝えましょう。緊張で苦労が水の泡にならないよう、面接練習で緊張感のある練習を重ねてください。
私の面接失敗談
最後に、わたしの面接の失敗談をお伝えします。反面教師としてお使いください。
都庁の面接は終始和やかな雰囲気で、過度の緊張なく終わりました。最終的な順位はあと一歩。悔しさはありますが、やり切った、という思いの方が強かったです。
一変して関東圏の県庁では、厳かな雰囲気での面接でした。適性検査込みで一日掛かりなので、自分の番が近づくにつれ緊張感も高まります。あまりの厳粛な雰囲気に、志望動機で真っ白になりました。そこからは総崩れです。厳しい質問の数々に、終わるころには意識も絶え絶えでした。
働きながらもぎ取った面接の機会、ぜひ無駄にしないで
わたしはせっかくの面接の機会を無駄にした形です。ですので、みなさんにはわたしが学んだノウハウから一次試験を通過し、悔いのないよう対策して面接に臨んでほしい、という願いを込めてこの記事を書きました。
ぜひ、活用して最終合格を勝ち取ってくださいね。