様々な理由で職場への不安と不満が膨れ上がり、転職したいと考えている20代の薬剤師さんも多いと思います。
「20代での転職はうまくいくのか」「職場で居場所ができたから、転職したいけど踏ん切りがつかない」という考えで毎日堂々巡りしている方もいますよね。
そこで今回は、転職すべきか、このまま今の職場に留まるべきかを悩んでいる20代の薬剤師さんに向けて、転職活動に入る前に考えるべきポイントをお話ししてみましょう。
20代の薬剤師が転職したいと思う理由
国家試験に合格し、念願の薬剤師として社会に出てから数年後。日々の仕事に慣れ、人間関係も安定し、新卒で入社した職場内であなたの居場所が確立していると思います。
その段階になると新卒のころと比べて心に余裕ができることで、思い描いていた職場と現実とのギャップ・働いている会社のアラがはっきり見えてきます。
「職場での人間関係がうまくいかない」「毎日似た処方を調剤・服薬指導するばかりで、経験値が上がっているか不安」「年収が思ったように上がらない」――といった今の職場に対する不満や不安で、友人で集まるとグチ大会になることもあるでしょう。
そこで、ここでは薬剤師さんが転職したいと思う理由を4つ見ていくことにします。
20代薬剤師の転職理由
1:職場の人間関係に疲れた
薬剤師の働く世界は狭いので、大部分の方は毎日同じ空間で同じ職員と顔を合わせていると思います。特に全国チェーンの調剤薬局では、店舗で働く人数も少ないのでどうしても関係が密に。
同僚全員がいい人ならいいのですが、癖のある人はいますよね。ソリの合わない人、なぜか自分にだけ当たりが強い人、さぼりがちで仕事を押し付けてくる人などなど。許容できればいいのですが、我慢しすぎると仕事より人間関係で疲れます。
度が過ぎる場合、上長に相談することもありですが、その上長があなたの疲労の原因であったり、信用できない場合もあるでしょう。人間関係でトラブルや我慢が重なると、仕事よりも疲れます。この職場から逃れたい、その思いが転職を考えるきっかけになります。
20代薬剤師の転職理由
2:大学のころ思い描いた薬剤師の理想と違う
卒業論文や国家試験対策に追われ、会社ではなく業種だけを見て、なんとなく待遇面や雰囲気を比較して新卒で入社する職場を選んでしまった人もいるでしょう。職場に慣れるまではそれで精一杯でも、慣れてくるとふと、なりたかった薬剤師像と違う、理想の仕事と違った、と考え始めるのです。
どうしても現場は会社の利益が重視されます。昇進すれば数字を考えざるを得なくなり、思い描いていた薬剤師像とのギャップがみえてくるものです。本当に自分がやりたいことはなんだったのか悩み初め、今の仕事を淡々とこなすことが苦痛になり、転職のきっかけになっていきます。
20代薬剤師の転職理由
3:年収が低く、今後もアップが望めない
病院で勤務している人に多い悩みです。病院薬剤師は、医療の生の現場で意志・看護師などの多職種とチームで働ける非常に素晴らしい職場です。医師と能動的に処方を話し合えるのも、やりがいがありますよね。
しかしやりがいがある分、当直や勤務時間外の勉強会など、労働環境があまりよくありません。また、近年の医療費削減の影響で年収が他の薬剤師職と比べて低く、出世してもそこまでの年収アップは期待できません。そして、今後の生活への不安が転職を考えるきっかけになります。
20代薬剤師の転職理由
4:スキルアップが望めない
同じ企業内でも、直属の上司によって新人の育成方法が違うことがあります。
調剤薬局であれば、自分は毎日同じ職場で同じような処方箋での経験しか積めていないのに、他のエリアの同期は直属の上長の方針で様々な店舗を廻って経験を積んでいる、といった違いを突きつけられることも。直属の上長が熱心でない場合、勉強会も特になく、すべて独学、他の同僚が課題に取り組む中、焦りが募ります。
このまま時間が無駄になるなら、転職してスキルを積みたい。そんな焦りは膨れ上がると、転職へのきっかけになるのです。
20代で転職した方が良い場合
経験の浅い20代での転職だと経験値不足で不利になるのでは、と不安になりますよね。でも20代という、吸収力の期待される年代で転職したほうが良いケースもあります。それが以下の4つのケースです。
1:第二新卒枠を狙いたい
20代での転職なら、まだまだ第二新卒の枠を狙えます。しかし実績や経験値を問われることは少ない分、あなたのポテンシャルが見られ、伸び代などの将来性に期待されます。
この職場で働きたい!という意欲を示せれば、ある特定の企業のルールに染まりきっていない存在は、歓迎される人材です。
2:キャリアアップが目的
20代でキャリアアップを目指しての転職も、企業側からみると高評価なことが多いです。若いうちから前向きに、自身の将来を見据えてキャリアを選択できる人間であると、好意的に見てもらえます。
しっかりと自身の将来のビジョンをもち、それに従って決断力を持ち行動できる人材は、企業側にとって貴重です。
3:受験資格に年齢制限がある場合
公務員薬剤師は受験資格に必ず年齢制限があり、その大部分は29歳が上限です。地方であれば30台前半まで挑戦が可能ですが、あなたにゆかりのない土地での合格は至難の業。もし目指すのであれば早い決断が必要です。
薬剤師の知識だけでなく、高校レベルの知識を問われる試験も課されるため、勉強の時間もかかります。早めに選択しましょう。
4:異業種に挑戦したい場合
20代の強みは吸収力なので、異業種への転職にもチャレンジしやすいです。未経験の業界でも採用されやすいので、思い切って挑戦してキャリアアップを目指すことも選択肢の一つ。
30代を過ぎてしまうと、管理職としての役割を求められてきます。これまでの経験やキャリアを重視されるので異業種への転職はとても厳しくなります。
ポイント
調剤薬局やドラックストア以外の、製薬企業や病院への転職活動は長期戦の転職活動になります。自分がどの業種に行きたいのか、ビジョンをはっきりさせてから活動に入りましょう。
転職を保留したほうが良い場合
転職はプラスに働くことばかりではありません。安易な転職はあなたのその後のキャリアを汚し、将来苦労します。
そこで、転職を保留したほうが良い場合(転職で失敗しやすい場合)についても見ておきましょう。
1:何のために転職するのか明確になってない、今の環境から逃げたいだけの転職
転職が容易な逃げ道に見えることがあるかもしれませんが、転職すれば楽になる、もっといい職場があるはず、という考えは短絡的です。
転職しやすいからと言って、転職があなたの人生に占めている重要性は変わりません。人生の転機、という認識をしっかり持ちましょう。
一度落ち着いて考え、何のために転職するのか、転職して何がしたいのか、きちんとビジョンを明確にしてから転職活動に入りましょう。
2:転職先に求める条件が定まってない
転職先に求める条件を定めず、条件があっても優先順位もつけずに求人を探すことは時間の無駄。転職は自分探しではないので、まずはゴールを決めましょう。
何も条件を決めていないと目先の給与や待遇に惑わされて、転職エージェントの誘導に乗るなどしてあなたの理想と全く違う職場に転職しかねません。必ず職場に求める条件を初めに書いて決めておきましょう。
3:情報収集せず、とりあえず同じ業種に行こうとしている
薬剤師の免許を生かして活躍できる職場は何も、薬局や病院ではありません。20代だからこそ他業種にもチャレンジできるのでぜひ視野を広めてください。
しかし他業種の情報はネットの情報だけだと掴みにくいこともあるでしょう。少量の情報で憧れて目指すと、実際入った際のギャップも大きくなるので、なるべく現場の声を聞きましょう。
- 実際に担当者のところに足を運んで話を聞いてみる
- 気になる業種で働く薬剤師の知り合いにその業界の生の声を聞いてみる
など、まずは情報を集めてから転職活動に入るのがおすすめです。
転職しようか悩んだときにやるべきこと
転職を考え始めたら、まずは落ち着いて、次の①~⑤ステップを順に行動に移しましょう。
頭の中で考えるだけなら悩みにしかなりません。でも行動に変えればあなたのキャリアアップや、リーダーシップを導くカギになります。
- 今の会社でのあなたの1年後、3年後、5年後、10年後のビジョンを紙に書く
- なぜ転職したいか紙に書いて、目に見える形で整理する
- 数日後、改めて②のリストを見、今の会社でも改善できそうな項目をまとめて、誰にどう相談するかを決める
- 翌日から行動に移す
- どの程度改善されたか、①で書いたビジョンに書き足せたかチェック
前述しましたが、薬剤師の働く環境は大部分が狭い人間関係と環境です。特に薬局やドラッグストアは小さな箱。同期は大勢いても、職場では同じ環境に囲まれる日々です。
環境や仕事に慣れるのに精いっぱいだった新人生活が過ぎると、変わらない環境の中「他の経験を積んでみたい」「給料が安い」「人間関係がうまくいかない」――といった不安と不満がたまっていきます。
直属の上長などとの面談で不満を伝えられれば良いのですが、様々な理由で伝えられないことがあり、思考が転職に逃げていく人も多いのではないでしょうか。
でも、転職一直線になる前に一度、上記の5ステップを試してください。転職はあなたにとって、人生の重要なターニングポイントです。初めての転職は特に重要。ここは慎重に進めていきましょう。
step
1今の会社でのあなたの1年後、3年後、5年後、10年後のビジョンを紙に書く
まずは今の会社であなたがどう成長して行きたいか、何ができそうか書いてみましょう。
何も思いつかず空欄でもいいのです。それでも一度、あなたが先輩から聞いた話や、新卒のころの夢を思い出して、一言でもいいので将来のビジョンを書いていきましょう。
きっと不安や不満で狭まっていたあなたの視野が広がります。不安や不満に支配され、会社の悪い面しか見えなくなっていたことに気が付くはずです。
step
2なぜ転職したいか、紙に書いて、目に見える形で整理する
不安や不満を目に見える形に整理することで、新たな視点が見えてきます。
年収の不満、通勤が大変、家賃補助がほしい、もっと大きな店舗で経験を積みたい、人間関係が辛い、など、思いつくままに書いていきましょう。ストレス発散にもなりますよ。
step
3数日後、リストを見、今の会社でも改善できそうな項目をまとめて、誰にどう相談するかを決める
数日経ってから作ったリストを見ることで、自分の転職したい理由を第三者の目線で冷静に見ることができます。
その中から、スキルアップの面で不満があるなら、自分で勉強し資格取得を目指してみる等、自分で改善できる面は目標に定めて研鑽しましょう。
人間関係など、自分ではどうにもできない部分で今の会社で改善できそうな項目をまとめ、誰にどう相談するか、情報を収集しながら計画を練ります。
step
4翌日から行動に移す
必ず、翌日から行動しましょう。アポイントに時間のかかる上長もいますし、何よりやる気があるときに行動しないと、結局中途半端に終わることは多いです。
経験を積みたい・人間関係に不満があるなら異動等、今の会社のままであなたの不満を解消する手段はいくらでもあります。別の部署に行くとやりたかった仕事ができることもあるので、会社の集まりでの情報収集も欠かさず行ってください。
全て意見が通ることは難しいかもしれませんが、改善はされても悪化はしません。
step
5どの程度改善されたか、Step1で書いたビジョンに書き足せたかチェック
どの程度改善されたか評価し、Step1で書いた将来ビジョンに書き足せるものがあれば足していきます。その結果に納得できず、ビジョンも白いまま、書き足されることもなければ転職活動を始めましょう。
いざ転職活動を開始するとき
今の会社でもどうにもならず、転職を決意した場合、5つのステップを経たあなたにはすでに
- なぜ転職したいか、転職先に求める条件
- どの業界に行きたいか、それはなぜか
- 数年先の将来ビジョン
が目に見える形になってできているはずです。
これがあなたの転職活動中の「軸」になります。この軸さえあれば、転職活動中に惑うことはありません。必ずあなたの行動力ある転職は成功するでしょう!