ここ10年ほどの間に、男性で看護師を目指す人は増加傾向になってきました。
漫画やドラマなどでも『ナースマン』として取り上げられ、耳にしたことがある方もいると思います。外来などでも男性看護師を良く見かけるようになりましたね。
しかし、看護師=女性というイメージは今も抜けきっていないように思いますし、実際に女性看護師の割合が圧倒的に多い職業です。現実問題、男性看護師はまだまだ少数派なのです。
ということで今回は、男性看護師の現実・実態、転職する際に気をつけたいポイントにスポットを当て、お話ししていきたいと思います。
目次
男性看護師の実態
そもそも男性看護師ってどれくらいいるの?
全国の看護師・准看護師の就業人数は約150万人と言われています。
これはあくまでも現在就業している看護師の数であって、潜在看護師の人数は加味されていません。その中で男性看護師はおよそ1割、女性が9割とされています。
150万人の中、平成26年時点で男性看護師は7万3,968人います。人数の性差は圧倒的に女性が多いですね。個人的にはもう少し男性の割合が多いかと思いましたが、現実はまだ少数のようです。
約7万人の男性看護師のうち、病院に勤務している人がほとんどで人数的には6万6,000人だそうです。
男性看護師が多い職場、働きやすい職場はどこ?
前述した通り、男性看護師は病院に勤務している人がほとんど。その中で男性看護師が多く在籍している診療科がいくつかあります。
- 精神科(心療内科)
- 透析室
- 外来、救命救急
- 整形外科
どうして上記の職場に男性看護師が多く集まるのでしょうか?
ひとつずつ理由を詳しく見ていきましょう。
精神科(心療内科)
精神科は男性看護師が最も多く在籍している診療科です。
精神疾患を抱えた患者さんが急に暴れ出し、暴力行為や自傷行為をしてしまう可能性が高い現場なので、力ずくででもそれを抑えなければならない時に男性看護師の力が必要となるのです。
ただ、今後精神科で働きたい場合は一般病棟にて2〜3年ほど看護師経験を積んでからが良いでしょう。
精神科の患者さんは身体的には健康であることが多いので、日常的に急変時の対応があまりなく、いざその場になった時に上手く対処が出来なくて戸惑ってしまうという場合があるからです。
透析室
透析室は入院している患者さんと違って、排せつ行為や身体的な処置はほとんどないため、男性看護師でも女性患者さんのお世話がしやすい環境でもあります。
また機械などの取り扱いも多く、男性看護師の方が対応に向いていると言われていますね。
外来、救命救急
外来や救命救急はどんな患者さんが運ばれてくるか分からない緊張感があったり、患者さんによっては暴れたりと、とても多忙なうえに常に緊張感が走る現場です。それゆえ、体力のある男性看護師が重宝される診療科となっています。
整形外科
整形外科は基本的には疾患ではなく、骨折などの外傷によって一時的に生活が困難になり、治療のために入院している診療科。骨折などで患者さんが自力で移動するのが困難な場合があり、そんな時に体力のある男性看護師がとても役に立ちます。
また、前述した通り基本的には皆さん疾患もなくお元気な方が多く、工事現場や土木作業などで働く方が入院することもあるので、他の診療科よりも若年層の男性が多くいます。そんな時に同性の看護師が処置などを行えると男性の患者さんは気負わずに安心できますよね。
男性看護師の給料の実態
平成30年賃金構造基本統計調査によると、男性看護師の平均給料は34万1,000円。年間賞与や特別給などは82万8,600円、年収は492万円となっています。
女性看護師の平均給料は33万800円、年間賞与や特別給などは81万5,100円ですので男性看護師の方がやや高いようですね。
看護師は一般的には高給取りなんて言われたりもしますが、実際にはそんなことはありません。一般社会で働く男性会社員の全年齢の平均収入は35万1,100円なので、比較すると男性看護師の給料はやや低めと見えます。
そしてこの男性看護師の収入には夜勤手当や危険手当などの含まれているため、身体的負担や精神的負担を考えるとむしろ安いように思えてきます。
さらに、男性看護師は年齢を追うごとの大幅な昇給はあまり見込めません。全年齢を通して収入は30万円台をキープしています。管理職になったり、訪問看護ステーションなどを立ち上げたりしない限り、高給与は期待出来ないでしょう。
男性看護師だからこその悩みとは?
これまで見てきたとおり、看護師は圧倒的に女性が多い職場。そんな女性だらけの職場で働く男性看護師にはきっと悩みが多いはずです。
そこで男性看護師特有の悩みをいくつか見てみることにしましょう。
人間関係
女性の看護師が多い職場で男性看護師は少し肩身の狭い思いや心細さを感じていることでしょう。
実際に女性の多い職場では噂話や陰口が好きな人もいますので、言われた時に反応に困る場面があると思います。そんなときは話に深入りせず、誰とでも同じような態度で接するように心がけると良いですよ。
男性看護師は少なくても、医者や薬剤師、リハビリ関係の療法士などは男性であることが多いので、病院内全体で見るとそれほど気にする必要はないはずです。
私がこれまで勤めた職場でも男性看護師は男性の医者らとよく話をしている場面があり、プライベートでも関わりがあったようなので楽しそうに過ごしている方がいました。
女性患者さんへの対応が難しい
これは男性看護師なら一度は経験したことがある人が多いと思います。
女性の患者さんから身体的な処置やケア(排泄介助や入浴介助など)は断られることが非常に多いです。患者さんから直接「女性の看護師に代わってもらいたい····」と言われることがあります。
私の場合、逆に若年層の男性患者さん以外からは言われたことが無いので、これは男性特有の辛さや少し悲しい点だと思います。
将来性への不安
男性看護師が特に悩むのがこの「将来性への不安」かもしれません。
資格を持っていればどこの地域でも働けることは間違いないですが、収入の大幅なアップは見込めませんし、同世代の男性会社員と比べると負担の大きい仕事の割に収入が少ないと感じます。その為、今後結婚や家庭を持つことへ不安を抱く男性看護師は多いです。
また先輩の男性看護師がまだまだ少ないこともあり、目指すべき指標が見えにくいという点も不安の種でしょう。一般企業と違い管理職の枠も少ないですし、その管理職でさえ女性の方が多いのです。
しかし必要以上に不安になる必要は全くありません。やはり需要が高い職業であることは間違いありませんし、給料も一定の30万円台を安定して稼ぐことが出来ますので、前述したような男性看護師が働きやすい職場を考慮しつつ、自分なりの将来へのビジョンを持つことが大切になってくるでしょう。
希望する診療科に行けるとは限らない
女性看護師の場合、基本的には希望する診療科で働けることがほとんどでしょう。しかし、男性看護師となるとそうはいかないものです。
例えば、小児科や産婦人科を希望したとしても「小児科は既に男性看護師が〇〇人いるから今は募集していない」「産婦人科の患者さんは女性だけだから、男性看護師なんてとんでもない!」などと言われてしまうこともしばしば。
また通常の病棟の内科や外科であっても、同じようなことが言えます。
「最近病棟に男性看護師が増えてきていて、女性の患者さんから“女性の看護師の方が良い、頼みづらい”とクレームが来た」というケースも聞いたことがあります。
男性看護師が転職で年収をアップする方法
看護師は年齢が上がるごとに大幅に昇給することは難しいとお伝えしてきました。
しかし、今の年収よりも確実に年収をアップできる方法があります。ここではその年収アップの方法について見ていきましょう。
- 管理職を目指す
- 男性看護師が活躍できる職場に転職する
- 専門/認定看護師を目指す
- NP(診療看護師)を目指す
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
管理職を目指す
看護師の年収をアップするキャリアアップへの道として王道なのが、看護師長や看護部長を目指すという方法です。
職場にもよりますが、管理職になると役職手当が付くようになりますので、年収アップに繋がるというわけです。金額は数万円といったところでしょうか。もちろん看護師長から看護部長になれば、さらに役職手当は増額されます。
管理職への昇格条件は、能力評価や上司の推薦となります。
そもそもあまり空きがあるポストではありませんが(全体の看護師の最終的な責任を背負う立場ですから不在ということがそもそもないはずなのです)、新年度に切り替わる際に交代となることが多いです。看護師経験を積み、組織で必要とされる人になれば昇進の機会を与えられるはずです。
私自身、働いていて男性看護師の管理職が増えてきたという実感がありますし、病院以外でも訪問看護ステーションやデイサービスなどで男性看護師の管理職を見かけるようになってきました。
男性看護師が活躍できる職場に転職する
上でも述べたように男性看護師が活躍できる職場や男性看護師の需要が高い職場もいくつかあります。早く年収アップしたい!という方はこのような職場を変える=転職することで収入が上がる可能性が広がります。
私の周囲の男性看護師たちは、近い将来的には精神科で働きたいという希望を持っている方がほとんどでした。女性看護師の中に精神科で働きたい!と希望する人は見たことが無かったので、やはり男性ならではの考えだなと感心しました。
最近では主要都市を中心に、男性専門の美容クリニックやAGA外来などが増えてきています。他にも医療機器メーカーや製薬会社などの職場はこれまでの看護師経験があれば誰でも活躍できるチャンスがあります。
専門/認定看護師を目指す
認定看護師や専門看護師の資格を取得すると、特別資格手当を支給されることがあります。収入としては月に数千円~2万円程度増額されるようです。
大学病院など大きな規模の病院では、認定看護師や専門看護師となると病棟勤務ではなく専門的なチームを組んで病院全体を巡回していくという勤務スタイルになることがあり、夜勤をしないようになる方もいます。
非常に高度な知識と専門性が必要とされますが、キャリアアップにもなり収入も増えますし、夜勤がなくなるとすれば頑張って取得する価値のある資格かもしれませんね。
NP(診療看護師)を目指す
診療看護師はまだまだ聞きなれない職業だと思います。看護師でありながら、診療を一部制限はあるものの行えるという国が定めた看護師の名称です。
5年以上の看護経験を積み大学院に進学し、2年間修士課程で医学を学びながら実習と研究を行います。大学院卒業と同時に、日本NP大学院協議会のNP認定試験に合格すれば診療看護師になれるのです。
診療看護師の収入は病院により様々ですが、まだ国内での資格取得者数が非常に少ないことから病院内に一人でもいると箔が付くので、需要は高いはずです。収入としては月に3~6万円程度増額される職場が見られました。
男性看護師について〜私の体験談
私はこれまで4か所の職場を経験してきましたが、その4か所の職場全てに男性看護師は2人以上在籍していました。20代~40代の男性看護師が多かったようです。
また、看護学校時代にも全体の内の3~4割は男性の看護学生でしたので、通常の学校とさほど変わらない学生風景だったように思います。
男性看護師が一人いてくれるだけでやはり安心感がありました。力仕事もそうですし、暴力行為をしてくる患者さんへの対応など女性看護師では力が及ばない部分に手を貸してくれるので本当にありがたい存在でした。
私の周囲の男性看護師はとても優しい方が多く、家庭を持ち養っている方も沢山いました。
個人的には今後さらに男性看護師が増えることを期待しています。それにより、女性だけの職場よりも人間関係の風通しも良くなるのではないかと思います。
「男性看護師の実態や転職で年収アップする方法」まとめ
今回は男性看護師に着目してお話してきました。
男性看護師ならではの悩みや実態が見えてきましたね。男性看護師の割合が今後増加し、女性と男性の割合が半々ぐらいになる日も遠くないのかもしれません。
男性だからこその需要も期待もあるはずです。皆さんの今後の活躍の参考になれば幸いです。